フォレストのめざすもの

身近な環境を知る

日本は四季の変化に富んでおり、身の回りの自然に目をこらしていればその季節ならではのいろいろなものを発見することができる。いつどこにどのような野草や食べられる木の実があるかを調べ、その食べ方を調べて実際につくってみることによって、季節や地域のことを体験的に知るフィールドワークになる。身の回りの自然の豊かさを知るとき、その地域の、お金には替えられない豊かさを発見することができる。

一人ではできないことをみんなで取り組む

大きな筏をつくってみんなで乗る、みんなで洞窟に入る、みんなで餅をつく、みんなでおおきな造形物をつくるなど、一人ではできないことをみんなでやる体験をする。明快な目的と有用な到達点を設定し、それにむけて全体で取り組むことによって連帯感、達成感、充実感を感じることができる。

自主性

プログラムの合間や終わったあとの自由な時間には、自分たちで考えた自然発生的な遊びがはじまる。自然の中での遊び方は実に多様だ。

貴重な自然の動植物を知る

人間と自然の境界領域を日本人は里山と呼んで有効利用してきた。人は自然から多大な恵みを享受しているが、人間界との境界上にしか生息しない動植物も多く、自然もまた人間の営みによって恩恵を被っている面もある。人が自然と楽しみながら関わることは、周囲の自然環境にもよい影響を与えることにもなる。

自然を楽しむ

美しい景観や草花、動植物、おいしい果物や山野草など、自然は様々なものを与えてくれる。その自然を守ってゆく最善の方法は、まずその恩恵を十分に感じ、楽しむことではないだろうか。その自然の恩恵を感じることで、初めて本当に自然は大切だと思えるのではないだろうか。

未体験のことをする、少し負荷のかかることをする

最初は無理だと思っていたことでも勇気を出してやってみたらできたとき、達成感が感じられる。探検心、冒険心に心が躍る。多少負荷のかかる作業をともなったプログラムのほうがむしろ緊張感が持続できて怪我も少ない。

その場にあるものを生かす

愛知芸大の敷地にはまだ手つかずの自然や里山、森、池そして畑などがあり、土、木、水、植物などの自然素材に溢れている。そして子供達はそれらの素材を生かして多様な活動や造形をおこなっている。活動や造形の素材は他所から持ち込む必要がないので運搬の労力も節約できるし、自然由来なので活動後はその場に廃棄しても土に還すことができる。また焚き火で燃やして燃料とするなどエネルギーとして再利用することもできる。

コミュニケーション

現在ではどこの家庭にも洗濯機、冷蔵庫、電気やガス等の調理器具がある。生活は機械化されて便利になったが、その分、労働によって社会の他者と関わる機会は減った。しかし野外では薪を拾って運んだり、それをノコギリで切ったり斧で割ったり、共同で調理をしたり後片付けをしたりして働くことが必要になる。そして共同で働くことによって労働は、他者と関わるコミュニケーションの形になる。

学生との交流

「フォレスト」ではアートやデザインを学ぶ愛知県立芸術大学の学生が、自身の作品を地域の子供達や大人に見てもらったり、またワークショップの参加者になってもらっていろいろなフィードバックを得る場にもなっている。そして地域の子供達や大人にとっても、学生との交流をとおして普段は得られない体験をする場になっている。

トータルに体験する

スーパーに行けばパッケージされた食料品が並んでいる現代では、すべてが分業化し断片化して全体像が見えにくくなっている。「フォレスト」では野菜の種まきから草刈りなどの畑の世話、収穫、調理までトータルに行うことによって、失われてしまった全体的な視野を取り戻すことを目指している。そして食べ物の生育から収穫、調理に関わり、採れたての野菜のおいしさを味わうことによって、子供達に豊かな原体験を提供することを意図している。

暮らしの中の美しさを発見する

日本人は何気ない日常の中の草花に季節の移ろいを感じ、そこに美しさと生活の潤いをみつけてきたのではないだろうか? 自然や季節に根ざした伝統的な暮らしを体験したり節句の祭りをおこなうことをとおして、都会生活では忘れられがちな季節の移ろいや暦の変化について体感的に感じることができる。

体感する

世の中にはテレビや新聞、雑誌、インターネットなどが伝える、二次的な情報で溢れている。そしていつの間にかそのような二次的な実体験を伴わない情報をもとに、何かを知った様な気になっていることも多いのではないだろうか。実際に物に触れて体で感じることによってこそ、本当にその物事を知るということにつながる。インターネットなどの情報が発達する現代だからこそ、実際に体感して物事を知ることを大切にしたい。

知恵を伝える

薪と羽釜でおいしいご飯を炊く、焚き火のしかた、魚のさばき方、タクアンの漬け方、食べられる山野草の見分け方、草餅のつくり方、幾何立体のつくりかたなど、失われつつある知恵を体験とともに伝えてゆきたい。


 

開催期間:
2008年〜以後毎年8~10回開催

開催場所:
愛知県立芸術大学長鶴池周辺、長久手市内山林等

発表:
2014年日本デザイン学会第61回春季研究発表大会口頭発表
テーマセッション A7-06子どものためのデザイン部会:「子どものためのデザイン」

助成:
2008年度愛知県立芸術大学学長特別研究助成

企画、運営:
石井晴雄(愛知県立芸術大学美術学部石井研究室
宮崎喜一(㈱アート&ライフ自然学校
中野敬子(アトリエフラワーチャイルド

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