日本デザイン学会誌「デザイン学研究特集号、特集/フィールドワーク再考」第21巻4号通巻84号
P8-15
2014年11月
単著
モノが溢れている時代には、モノ以前の場や体験、関係、交流、共感といった無形のコトをいかにデザインするかが重要になっている。本稿では地域のコミュニティーで人と人の関係が薄れている現在において、いかにデザインをとおしてコミュニケーションを活性化するかについて、地域の住民参加によるワークショップ「親と子の野外活動ワークショップ・フォレスト」、地域の交流の活性化のためのイベント「ながくてピクニック」、愛知県立芸術大学での実技課題「無形のデザイン」などの事例を元に考察した。
抄録
現代社会にはモノが溢れ、普段の生活に必要なものはすでに充足されており、我々生活者はこれ以上モノは必要はないと感じているのではないだろうか。最近は工場の生産現場を見せるオープンファクトリーやバックヤードツアー、モノ作り体験など、単にモノを売るだけではなく新しい体験や出会いの場を提供する「体験型消費」「つながり消費」「共感消費」といった新しい消費動向も注目されている。モノがない時代には単にモノを作っていればよかったデザインのあり方も、モノが溢れ、モノの売れない時代には、従来どおりモノを作るのではなくモノ以前の場や体験、関係、ストーリー、共感といった無形のモノをデザインする視点が必要になっている。また現代社会は都市化によって、地域のコミュニティーでの人と人の関係は薄れている。そして子供達が多様な年代の大人と関わる機会も減少しており、そこから多様なことを学ぶ機会も減少している。そこで意識的に地域のコミュニティーやコミュニケーションを活性化するなんらかの仕組みが必要になっている。本稿では、親と子の野外活動ワークショップ・フォレスト、市民参加型のイベント「ながくてピクニック」 2014年〜、「無形のデザイン」などのフィールドワークの実例を挙げながら、学生や地域の人とのリアルな交流、コミュニケーションのプラットフォームとしての野外、状況的パーソナリティー、子供をとおして考える社会、未来、音楽とアート、食によるコミュニケーション、食がつくる共感感覚と祝祭性、モノが充足する時代の体験、地域への参加意識、その場で、そこにある状況、環境を生かす、受け手との関係で考える、動的に考えること等について論じた。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssds/21/4/21_KJ00009814244/_article/-char/ja/