助成団体:トランジションながくて(愛知県立芸術大学石井研究室内)
解決しようとする地域課題「地域文化と先人の知恵」
近年は地域のコミュニティーは分断され、地域で安心して暮らすことができなくなっている。 特に2011 年に起きた東北大震災によって、私たちは地域社会の人と人とのつながりの大切さ を改めて思い知らされた。いくら社会の体制やシステムがあっても、いざという時はやはり普 段から個々の住民がいかに地域社会とつながっているかが大切になる。そのためにはまず地域 の人達と「顔の見える関係」をつくり、地域で安心して暮らせる関係をつくることが大切なの ではないだろうか。そこで私たちは音楽やアート、食を使った参加型のイベントによって、地 域の人と人が出会い交流する場をつくりたいと思う。 本来音楽やアート、食は人を集め、人の心を開放し、人と人の交流を促進する力がある。し かし近年の音楽やアートはCD が何枚売れたかとか、絵がいくらで売れたかなどといった商業 的な側面ばかりが評価され、地域に根ざした音楽やアートのあり方は忘れられてしまったので はないだろうか。一昔前は村のお祭りなどでは神楽やしつらえという形で、コミュニティーの 中に芸能やアートは生きていたのではないだろうか。 近代化以前の日本では、季節の節句ごとや農作業などが一区切りついたときなどに、さまざ まなお祭りがあった。それによって日頃の農作業などの労をねぎらい、収穫を共に喜び合い、 収穫を神に感謝し、共に収穫物を食べ、共同体の結束を確認し合っただろう。また近隣の村々 からの来訪者を招き入れ、人と人の交流や新しい出会もあっただろう。そしてそこには必ず唄 や踊りといった芸能や様々なしつらえがあっただろう。お祭はそのようにコミュニティーの結 束や交流を促す場であり、音楽やアートはそのような交流の場をつくる機能があったと思う。 このイベントではそのような祭りに込めた先人の知恵を想い起こし、その想いをもう一度現代 的な形で復活させたいと思う。 また現在はインターネットなどの情報テクノロジーが発達し、どんな地域からでも多様な情 報を発信することができるようになり、地域発の文化の創造と発信が可能になってきている。 またこの地域には独自のスタイルを持つ若いミュージシャンやアーティストも多く、愛知県立 芸術大学の学生や卒業生もこの地域で暮らしながら活動しており、そんな彼らに表現の場を提 供し、地域住民との交流の中から地域に根ざした文化が生まれ、地域のコミュニティーづくり に貢献するアートや音楽が生まれてくることを目指したい。 またこのイベントは単に音楽やアート、食べものを一方的に提供するのではなく、皆が同じ 目線に立って共同でつくりあげる参加型のイベントにして、同じ体験を共有することによって コミュニティーの一員として参画意識を持ってもらうことを意図している。このイベントは長 久手市内の各所で開催することを想定している。長久手市内には山林や農業用の溜め池、畑な どの里山が残されている。そのような里山で音楽を聴くなどして里山に親しんでもらうことに よって、里山を大切にし有効に利用してきた先人の知恵を想い起こしたいと思う。