Think Global, Act Local 地域にある豊かな暮らし

インターネットがもたらした情報の流れの劇的な変化とフラット化する世界

現在インターネットの普及によって、世界中のどこにいても様々な情報を入手することができるようになった。また誰でもインターネットサイト構築の技術と知識があればどこにいてもwebサイトを開設することが可能になり、FacebookやtwitterなどのSNSを使えば誰もが簡単に情報を発信することができるようになってきた。インターネットの普及によって、従来はマス媒体からの一方的な情報の受け手に甘んじていた個人や地域が、地域に居ながらにして情報発信をおこなえるようになり、それまで社会の「辺境」にあった地域の情報のハンディーはなくなりつつある。
「地域」とはもはやネガティブなものではなく、むしろその固有の自然や風土、歴史、産業を生かして、その場所でしか体験、生産することができない体験やコンテンツ、製品を提供するものとして再認識することができるようになった。過疎化し疲弊しつつある地域がある一方、情報発信を積極的におこなって観光客増加につなげたり、様々な地域おこしのムーブメントを立ち上げ、グルメや観光、お土産などの地域ブランドの開発などが行われる例も多くなってきた。まさに環境活動家のデビッド・ブラウアーが1969年に提唱したという『Think global, Act local』(地球的な視野で考え、身近な地域で活動せよ) という言葉そのままに、広い視野を持ちながら地域に密着して活動をするという時代が到来しつつある。

垂直統合型から水平分散型へ、分散化する情報、エネルギー、暮らし

東北大震災の後の原発の後処理の問題や、計画停電、節電、その後の海外からの化石燃料の輸入増加による大幅な貿易赤字など、我々は我々の生活を支えている巨大なエネルギーシステムがいかに脆弱なものなのかということを思い知ることになった。インターネットが米ソの冷戦下でミサイル攻撃から通信回線の壊滅的なダメージを避けるために開発された分散型のネットワークであることは知られているが、原発などの大規模集中型のエネルギーシステムはミサイル攻撃ではなく天災などによるダメージにも弱いということが実証されてしまった。現在、生活の安全を守るという視点からも分散型のエネルギーシステムの導入は重要になってきている。震災以降再生可能エネルギーの固定価格買取制度が始まり、太陽光発電や風力発電、バイオマス発電などの再生可能エネルギーの導入など、地域でのエネルギーの地産地消の動きも進みつつある。
農産物のグローバル化が進められる一方、全国の道の駅は活況を呈し、農産品の地産地消化の意識も進んでいる。そしてスマートグリッド、スマートシティー構想など、エネルギーや情報、食料、社会システムなどあらゆる分野で小規模分散型のシステムの導入が進みつつある。3Dプリンタの普及などによって、従来の生産者対消費者という区分ではくなく、アルビン・トフラーのいうプロシューマー(生産消費者)という存在も現実化してきている。
太陽光発電やバイオマス発電、雨水利用システム、スマートグリッド、スマートシティー構想など、最先端のテクノロジーによって実際に地域循環型の持続可能なライフスタイルが実現可能な段階にきているが、地域で暮らすということは単に昔の生活に戻れば良いということではなく、現代のテクノロジーが、身の回りの資源やエネルギーを現代の生活に合った形で利用可能にしてくれる日も遠くはないだろう。インターネットによっていち早く具現化された情報分野での水平分散型のモデルが、やがてエネルギーの分野に波及し、物流や食、農、暮らしや働き方そのものへと波及し、社会システムそのものが地域循環型、水平分散型へと変貌しつつある。

身近なところから主体的に

福島第一原発事故の放射能漏れの問題など、巨大なシステムの問題について個人では手の届かないものに対して、個人はなす術もなく思考停止に陥り、無力感を募らせがちだ。しかし現在のインターネットを始めとする水平分散型の情報、生産、流通、エネルギーのシステムは、個人や地域でも維持しコントロールが可能であり、巨大なエネルギーや社会システムに依存したり、コントロールされる必要はなくなり、個人の意識次第でそれらの水平分散型のシステムを使用し、参加することが可能になりつつある。そしてそれらの自身でハンドリングすることができるシステムの導入によって、垂直統合型の巨大なシステムの下にあって思考停止した意識から解放され、より主体的に多様な情報発信や創造、生産活動をすることが可能になりつつある。

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